(独)国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報

世界保健機関

「バイオジェニックスの時代へ」

バイオジェニックスとは
バイオジェニックスとは、腸内菌叢(フローラ)を介して良い生理効果をもたらすプロバイオティクス、腸内有用菌の増殖や活発化を促すプレバイオティクスに対して、腸内フローラを介することなく、体に直接働きかけて生理機能を修飾し、免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍効果、抗血栓、造血作用などの生体調整・生体防御・免疫予防・回復・老化制御などに働く成分を意味します。

※腸内菌叢とは、
ヒトや動物の腸は、摂取した食餌を分解し吸収するための器官であるため、生物が生育するのに必要な栄養分が豊富な環境である。このため、体表面や泌尿生殖器などと比較して、腸内は種類と数の両方で、最も常在細菌が多い部位である。この多様な細菌群は、消化管内部で生存競争を繰り広げ、互いに排除したり共生関係を築きながら、一定のバランスが保たれた均衡状態にある生態系が作られる。このようにして作られた生態系を腸内菌叢(ちょうないきんそう)と呼ぶ。
なお、この系には細菌だけでなく酵母など菌類や、細菌に感染するファージなども混在してバランスを形成しているため、腸内常在微生物叢、腸内フローラ、腸内ミクロフローラなどという用語がより厳密ではあるが、一般にはこれらの細菌以外の微生物も含めて腸内菌叢と呼ばれることが多い。

腸内細菌のバランスは年齢とともに変わる
まず、ヒトの腸内には、生まれた直後に大腸菌が出てきます。しかし翌日にはビフィズス菌が出始め、5日ごろには、ビフィズス菌が大部分となり、腸内細菌の95%を以上を占めるようになります。つまり、母乳を飲んでいる赤ちゃんの腸内で菌を100倍培養すると、95個はビフィズス菌になるのです。
ですから、母乳を飲んでいる赤ちゃんはきれいな黄色い便をしています。
しかしながら、大人と同じものを食べるようになると、赤ちゃん型のビフィズス菌は好きな母乳やミルクが摂れなくなったために減っていき、代わりに大人型のビフィズス菌が増えていきます。

大人になると、ウイルス感染などをきっかけに悪い働きをする日和見菌バクテロイデスなどが優勢 になり、腸内細菌全体の80%を占めるようになります。
一方、大人型のビフィズス菌は、量は減るものの、ずっと維持され、健康な大人の場合、大体10~ 20%くらいに保たれ、それを維持することが重要です。ただ、大人もビフィズス菌を保持していますが、赤ちゃんほど優勢ではないため、便は黄土色、ないし、褐色をしています。黄土色の糞便の 場合、pHそんなに低くありません。トイレで便を見たとき。黄土色だったらビフィズス菌が多い証拠です。pHが中性に近くなると茶色っぽくあり、アルカリになってくると便秘便、色は褐色になり、さらに悪くなると黒褐色になります。このときにはビフィズス菌が非常に減っています。

老人になると、便が非常に臭いといわれますが、それはビフィズス菌が減って腐敗菌が優勢になるからです。悪玉菌の代表がウェルシュ菌ですが、健康な状態では菌数は非常に低く抑えられ、出たり入ったりしています。しかし、典型的な悪い腸内細菌を持っている老人の大腸では、ウェルシュ菌の占める割合が高くなり、ビフィズス菌はいなくなっていいます

※日和見菌
普段はほとんど活動していない菌。しかし、悪玉菌が優勢になると、とたんにその味方をして悪さをする。

腸内ではビフィズス菌が最優勢
下の図で分かるとおり、腸内細菌は非常にバランスが取れているのです。腸内細菌の中には有用菌もあれば、有害菌もあります。有用菌はビフィズス菌、乳酸桿菌、腸球菌で、中でもビフィズス菌が最優勢とされます。最優勢であるビフィズス菌の有用な働きとしては、腸管の感染を阻止消化吸収の補助有害菌の増殖抑制免疫機能促進があります(図2)。


このビフィズス菌がとても重要で、ビフィズス菌を働かせることによって、健康維持、健康増進が行われています。一方、腸内細菌には、有害作用を持つものが非常に多いのも事実です。それらは腐敗産物を作り、中には発がん物質や老化物質、毒素を作るものもいます。この毒素を作る菌が、下痢や腸炎、便秘、肝臓障害、高血糖、高血圧、がん、自己免疫疾患、免疫抑制などの悪い作用を身体に及ぼします。

一方、腸内の8割を占める日和見菌は、日常のストレス、免疫抑制剤、抗生物質、手術といった外的ストレスを受けると、今までおとなしかったのに、その病原性を発揮して、日和見感染を引き起こします。そのため、手術でがんを取り除いても免疫が下がった状態にあると、日和見菌が腸から入り、血液の中で増殖し、敗血症を起こし、患者が亡くなるということはよくあるのです。ただ、それを臨床の医師はよく知らないために、がんを除去したのにどうして亡くなるのか理由が分からないままになることがままあります。それゆえに、腸内の悪玉菌や日和見感染を阻止するにはどうすればいいのかということを考えていく必要があります。

※日和見感染
健康体であれば、腸内にいても体内に侵入し増殖することはないウイルスや細菌などによって抵抗力が弱まったために、感染を引き起こされてしむこと。

※バイオジェニクス連絡協議会 「第1回バイオジェニクスセミナー講演録」より転載